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第5回GRIPS SDGsアワード受賞プロジェクト

シェムリアップスマートシティプロジェクト

プロジェクトの詳細

「シェムリアップスマートシティプロジェクト」は、より持続可能で包摂的なスマートシティへという市の構想を促進するものです。このプロジェクトは、スマート技術、能力開発、関係者との協力を結びつけることで、渋滞、非効率な廃棄物管理、細分化されたガバナンスなど、都市の抱える課題に対応しています。
本プロジェクトは、以下の三本柱を中心に展開されました。

1.　スマートシティロードマップの策定
包括的なスマートシティロードマップは、シェムリアップ州政府や現地の関係者と共同で策定されました。モビリティ、環境、観光産業、セキュリティといった重要優先分野の概要を示すとともに、ASEANスマートシティ?ネットワークやカンボジアの国家都市構想に適合させた実施計画となっています。ロードマップには、短期的なパイロット事業と長期的な開発目標という段階的なアプローチが採用されています。

2. 能力開発と関係機関との協力
スマートシティの実務の組織化を図るため、プロジェクトでは現地の政府職員、技術者、コミュニティリーダーを対象にしたワークショップや研修会を15回以上開催しました。テーマは、データガバナンス、都市管理、デジタルツール、利害関係者の関与に及んでいます。州政府内には、公式な作業部会が設置されプロジェクトの活動を調整する一方で、特に日本の香川県高松市との国際協力を通じ、都市管理の実務に関して協働による学びを実現しました。

3.　パイロット事業の実施
プロジェクトでは、以下の７つのパイロット事業を展開し、各都市課題に対応しました。

違法駐車モニタリング―渋滞緩和?歩行空間の改善を目的に、監視カメラ（CCTV）を設置し違法駐車をモニタリングする環境整備を行いました。この事業から得られた教訓を、市内の他のCCTV設置地点に応用することが期待されています。
スマート廃棄物収集―現在のごみ収集業務の効率性を評価するとともに、収集車追跡アプリを実装し、廃棄物収集運搬を改善しました。
観光統計のデジタル化―デジタルデータ収集の仕組みを導入し、観光関連データの入手可能性、正確さ、アクセスのしやすさを高めました。
政府内文書管理―電子文書システムを開発?試行し、透明性を高めるとともに、事務処理の遅れを削減しました。
環境モニタリングーアンコール遺跡地区内に環境センサーを設置し、大気環境を常時モニタリング可能な体制を構築しました。
観光産業における官民連携促進―コンソーシアムを設置し、政府、民間セクター、学術機関の連携を拡大しました。
データプラットフォームシステムの開発―リアルタイムで市のデータを統合?視覚化するためにスマートシティ?データプラットフォーム（SSDaP）を開発しました。オンラインアクセス可能（https://data.siemreap.gov.kh）なSSDaPは、エビデンスに基づく政策策定に資することを目的とし、行政の透明性と市民の公開情報へのアクセスを向上させるものです。

パイロット事業は、JICAの専門家とシェムリアップ州政府が共同で実施。州政府側はTip Piseth氏主導で連携を図り、現地の計画やリソースの動員を行いました。尾崎氏は、スマート技術の導入、ロードマップの設計、相談?助言によるサポートを主導しました。現地の状況に合わせながら、イノベーティブな解決策を見出すうえで、Tip Piseth氏と尾崎氏の緊密な連携は欠かすことができないものでした。

プロジェクトでは、ロードマップの体系化、パイロット事業の実装、投資の誘致にも注力しています。シェムリアップの都市管理能力の強化にとどまらず、ASEAN全域のスマートシティ開発モデルとなるプロジェクトになりました。

プロジェクトの成果と影響

プロジェクトでは、シェムリアップの都市ガバナンスにスマートシティの方針を取り入れることに成功しています。主な実績として、スマートシティ?データプラットフォーム（SSDaP）の立ち上げ、CCTVによる交通モニタリングの改善、デジタル追跡アプリを使用した廃棄物収集の最適化、組織能力の構築を挙げることができます。また、高松市とはスマートシティ施策の実施に関する覚書を締結しました。こうした取り組みは、SDGsの「目標11：住み続けられるまちづくり」を直接的に推進し、「目標9：産業と技術革新の基盤をつくろう」や「目標16：平和と公正をすべてのひとに」、「目標17：パートナーシップで目標を達成しよう」の実現に貢献しています。このプロジェクトは、データに基づき、行政サービスや透明性、強靭性を高める市民中心の都市計画の基盤を構築しました。