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Nguyen Duc Thanh, Vietnam
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ベトナム国家大学ハノイ校経済経営大学
ベトナム経済?政策研究所(VEPR)所長
Public Policy Program Ph.D. (2008年修了)
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※インタビュー:2011年7月
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2008年にGRIPSでDevelopment Economicsの博士号を取得。ベトナムの主要大学においてマクロ経済学を教えた経験を持つ。2007年3月から2008年9月までは財務省政策諮問機関(PAG)の上級研究員であった。2008年7月、ベトナム国家大学ハノイ校経済経営大学においてベトナム経済?政策研究所(VEPR)を共同設立、以降、同研究所の所長およびチーフエコノミストを務める。複数の諮問委員会のメンバーも兼任し、近年では、国会の経済委員会によるマクロ経済顧問団に招聘されている。また、学術誌に幅広く論文を出版しており、ベトナムの政策協議にも積極的に参加。高い影響力を持つベトナム年次経済報告書(Vietnam Annual Economic Reports)の創設者であり、現在編集長を務めている。2009年から毎年刊行されているこの報告書 は経済研究および政策策定の分野において広く認識されている。
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-あなたの専門分野とその分野に従事するに至った経緯を教えてください。
私はベトナムのマクロ経済問題および開発問題を専門とするエコノミストとして働いています。私がこの分野で働くようになったのは、学生の頃からエコノミストになりたいという強い気持ちを持っていたからです。ですので、大学院教育もその他の訓練も、そのための道をたどったものになりました。幸運と言うべきなのか皮肉と言うべきなのかわかりませんが、留学を終えて日本からベトナムに戻った際、多くのマクロ経済的問題や開発問題が深刻な状況に陥っていたため、帰国してすぐにベトナムの諸情勢に直接関わる機会を持つことができました。
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-GRIPSで2008年に博士号を取得されたあと、Thanhさんはベトナムに戻り、ベトナム国家大学において経済?政策研究所を設立されました。この研究所の活動内容と、設立者および所長としての任務について教えて下さい。
GRIPSでの博士課程の奨学金が2006年9月に終了したあと、私は博士論文をほぼ完成させた状態でベトナムに帰国し、そこで論文を最終的に仕上げ、口頭試問の日を待ちました(私の主指導教官であった大野健一教授は博士論文の質と完成度を厳しい目で見て下さいました。このことにいま一度感謝申し上げたいと思います。) 実を言うと、口頭試問のため東京に戻るまでの間かなり時間の余裕がありました。そこで、私は政府をサポートする目的で試験的に設立された専門家集団である、財務大臣の政策諮問機関(PAG)に参加することになりました(このプロジェクトはUNDPベトナム事務所から資金援助を受けています。)この機関において私は数多くのメンバー(研究者)の採用に関わり、若手の急進的なエコノミストを含むメンバーによって構成された非常に画期的なグループを立ち上げました。このグループのメンバーは皆先進国の大学院で経済学を学んでおり、ベトナムが必要とする経済構造および改革について共通の見解を有していました。しかし、財務省の多くの部署はこのグループのことを良く思っていなかったので、私たちは2008年半ばにそこでの仕事を辞めることにしました。そしてこの時に、いかなる政府や資金源からも独立した新たな研究所を自分たちの手によって設立することを思いついたのです。しかし、この研究所に全力を注ぐことにはある程度のリスクが伴いました。と言うのも、私たち全員がすでにベトナムにおける主要な学術機関で安定したポジションについていましたし、政府や国際機関からの財政支援を受けない研究所というのは前例がなかったからです。それでも私は、研究所での活動に集中して、すべての努力をそこに注がない限り、この研究所が存続する道はないと思いました。そこで私は自らリスクを負うことを決め、日本へ留学する前から働いていた国民経済大学での職を辞しました。そして2008年7月に、PAG時代のメンバーと主催大学であるベトナム国家大学ハノイ校経済経営大学からの協力を受けて、ベトナム経済?政治研究所(VEPR)を設立しました。
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VEPRの発足時から、私は所長として活動してきました。私の任務は、VEPRがベトナム国内で広く認められたシンクタンクとなるよう運営し、発展させていくことです。また、VEPRの責務はベトナムの経済政策の策定プロセスおよび政策決定の質を改善することです。私たちは、より良い政策はより良い経済、ひいてはより良い社会の構築につながると信じ、「優れた政策、健全な経済」 (Good Policy, Sound Economy) をモットーに活動しています。VEPRの運営は初めは大変でしたが、同時に非常に刺激的でもありました。時には資金調達のために、それまで教えたこともなかった短期コースで教鞭を取ったこともあります。そして、研究、協議会、メディアを使った広報活動を通して、私たちの研究所は徐々に広く知られるようになりました。今日では、VEPRは経済の専門家や政策立案者のコミュニティーのみならず社会全般に影響をおよぼし、高い評価を受けるまでに成長しています。
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ベトナム経済の構造改革が今後の課題です
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-Thanhさんは、国会の経済委員会?マクロ経済顧問団のメンバーでもあり、グエン?タン?ズン首相より要請を受けてベトナムのインフレ問題についての分析と見解を発表されたとのこと。現在の立場から見て、ベトナムの今後5~10年の主な課題と可能性についてどう考えますか?
ベトナムはこれまで、政府による経済への過干渉という問題を抱えてきました(これは今後も取り組まなければならない問題です。)ベトナム経済はいまだに国有企業体制によって支配されており、国の資源の大部分が国有企業によって消費されています。また、この体制は政策決定プロセスにも非常に大きな影響を及ぼしています。残念ながら国有企業は効率的であるとは言えず、したがって、これらの企業が占有している資源の使用も効率的には行われていません。また、国有企業が作り上げようとしている政策は一般の営利活動を促進するものはなく、むしろ彼らの特権や独占権の獲得と維持による特殊利潤追求型(レントシーキング)の政策です。これに加えて、国家および国有企業による投資が毎年巨額を占めるため、経済における根本的な不均衡も生じています。この不均衡と、政府がポリシー?ミックスに不慣れであることが組み合わさって、近年のベトナムのマクロ経済の不安定さ(インフレがその一例)やその他のマクロ経済的諸問題を生み出しています。これらの経済問題と、構造改革および効果的な国際統合に取り組むことが、今後10年間のベトナムの主な課題であると考えます。
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ベトナムの若きリーダーとして
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-まさに若手のリーダーになられたようですね、これまでに一番誇りに感じた成果や、これまでのキャリアで感じたやりがいはどのようなものがありましたか。
私が最も誇りに思うことは、VEPRがベトナム社会に影響を与えてきたということです。私も私の同僚たちも、自分たちの知識や強い意志はベトナム社会に影響を及ぼし得るものであり、また、社会の変革に貢献するものであると信じています。私たちが貢献できることは今の段階ではわずかかもしれませんが、それでも信念を追求し、その結果私たちの活動がベトナム社会において影響を持ち始めていることを誇りに思います。
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-これまでずっと、学問の世界でキャリアを積んでいきたいと考えてこられたのでしょうか。学問の何がThanhさんを惹きつけるのでしょうか。また、もし他の職業を選択するとしたら何になりたいですか?
偉大なるオーストリアの経済学者、カール?メンガ-は、「もし自分に7人の息子がいたならば、その全員に経済学を学ばせただろう」と言っていたそうです。また、ノーベル賞受賞者であるロバート?ルーカスは「ひとたび経済発展問題について考え始めたら、他のことは考えられなくなる」と述べています。私はこれらの偉大なる経済学者たちの、この職業に対する情熱とビジョンをここで共有できることを嬉しく思います。そして日々、私は彼らの教えと目の前の現実から多くを学び、学問の道を真に楽しんでいます。ですから、もし別の選択をする機会を与えられたとしても、私はまた経済学の道を選ぶと思います。
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GRIPSでの時間は私を大きく変えてくれました。
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-日本で過ごした時間とそこでの研究は、その後の生活およびキャリアにどのような影響を及ぼしましたか?
東京で過ごした日々は、私の人生の中で最も幸せで有意義だった時間のひとつです。留学中、私は経済学のみならず、長く豊かな歴史を持つ日本や留学中に訪れた他の国々を含む、ベトナムの外の世界の現実をたくさん学びました。GRIPSには研究のための豊富なリソースがあり、素晴らしい教授陣と親切な職員がいます。また、研究を通して多くの場所に訪れる機会を得ることもできました。GRIPSでの時間は私を大きく変えたと感じています。
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-現在GRIPSで学んでいる学生にアドバイスをお願いします。
勉学に一生懸命励むこと、日本の文化を楽しみ、その豊かな歴史を学ぶこと。これが私からのアドバイスです。また、日本国内、そしてできれば他の国にもできるだけたくさん旅をすることをおすすめします。お金を節約するのではなく、日本や世界を旅することに使って下さい。この留学が色々な場所に行ける最後のチャンスになるかもしれませんし、何より旅をすることで人的資本を蓄積することができます。これは、節約することで母国に持ち帰ることのできるお金よりもはるかに貴重なものです(GRIPSや日本で出会った友人の多くが日本滞在中になるだけ貯金をしようとしていました。だからこそ、私はこの点を強調したいと思います。)
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-GRIPSの修了生ネットワークをより強固にするために何かご意見はありますか。
修了生たち自身で(もしくはGRIPSを通して)、より多くのネットワークの機会やイベントを企画していくべきだと思います。また、GRIPSのコミュニティーは多くの国で影響力を持つようになってきていますから、修了生で共同研究プロジェクトを行うなど、より幅広い協力の実現も可能だと思います。GRIPSの修了生間のネットワークや協力は、個々人のキャリアの育成のみならず、それぞれの母国の発展にもつながるのではないでしょうか。このような活動は温かく受け入れられ、きわめて有意義なものになると思います。
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